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平面図だけでは分からないこと

 

住宅で「一番大切なこと」は何でしょうか?

広い間取り?収納の多さ?部屋の充実度??カッコ良さ???

それは大きな間違いです。

住宅で一番大切な事は「家族の繋がりとコミュニケーション」です。

空間がどのように繋がり、どこで自然とコミュニケーションが生まれるかをしっかりと計画することがとても大切です。

 

住宅を検討している人の多くは平面図を基軸に考えていますが、平面図だけを見ても「家族の繋がりとコミュニケーション」がどのように生まれるのかは全く分かりません。

住宅の中での「家族の繋がり」や「外との繋がり」を正確に把握するためには、住宅を立体的に捉える必要があります。

平面図だけ見て住宅を購入するのは、とても危険です。

今回は「家族の繋がりとコミュニケーション」の計画と断面図の重要性を解説します。


目次

 

■家族の繋がり。

 

■住宅は断面図から考える。

 

■まとめ。

 


■家族の繋がり。

ある程度予算があるクライアントの要望で多いのが、ご主人の書斎、奥様の書斎(家事スペース)、子供部屋は7帖以上欲しい、などなど。

個人の部屋の充実は確かに憧れますよね。

上記のような要望があった時に僕は「本当に必要ですか?」と質問します。

もちろん家で仕事をするとか、趣味の物が多すぎて専用の収納部屋が欲しいなど、本当に必要なこともあります。

しかし、予算があるからといって個人の部屋を充実させるのは危険です。

 

何故危険か想像して下さい。

自分の好きなものに囲まれた誰にも邪魔されない部屋ですよ。

その部屋の居心地が一番良くなるのは当たり前です。

ご主人は自分の書斎へ…奥様も自分の書斎へ…子供はもちろん…。

それは家族の住宅として本当に良いでしょうか??

 

昔は「引きこもり」なんてワード、無かったですよね。

それは個人の部屋が充実しておらず、家族で同じ空間を使用していたからです。

現在の住宅で「ワンルームにしましょう。」とは言えませんが「家族の繋がりとコミュニケーション」を考えることはとても大切なポイントです。

 

そこで僕がおすすめしているのは、「書斎や勉強空間として利用でき、趣味の空間としても利用できる家族のフリースペース」を作ることです。

この空間を作ることで、LDKとは性質の違う家族の繋がりが生まれます。

フリースペースは、吹き抜けと繋がる位置に設けると効果的です。

吹き抜けを通じて、フリースペースで誰が何をしているのか、何となく家族の気配を感じることができます。

吹き抜けの重要性については、「吹き抜けはいる?いらない?」の記事で詳しく解説しています。

 

 

■住宅は断面図から考える。

「家族の繋がりとコミュニケーション」を考える時に、平面図だけではその繋がりは全く分かりません。

断面図やパース、模型などを使って空間を立体的に把握することが大切です。

僕が住宅の設計をする時は、必ず平面図よりも先に断面図の設計をします。

順番は以下の通りです。

 

1.住宅のコンセプトを決める。

・地域や敷地の環境を読み取りながら、クライアントの要望やイメージを基に決めていきます。

 

2.断面図で家族の繋がりを検討。

・吹き抜けからフリースペースに繋がるようにする。

・空間をオープンにして、どこで誰が何をしているのか見えるようにする。

・部屋の光だけが漏れるようにする。

・人の気配だけ感じられるようにする。

・完全プライベートを確保する。など

上記をケースバイケースで選択します。

 

3.断面図で外との繋がりを検討。

・日光がどこから当たるのか、季節に応じてどの角度で入るのか。

・直射日光が当たる空間、直射日光は当たらないが明るい空間、暗い空間はどこか。(直射日光は当たらないが明るい空間を多くしたい)

・外を感じられる大きい窓を付けたい場所はどこか。

・窓からは何が見えるのか。

・近隣住宅の窓の位置高さはどうか。など

 

4.上記を検討した後に平面図の検討。

・要望の部屋が納まるか。など

 

5.模型やパースで全体の繋がりを再検討。

 

1~5を何度も繰り返し、家族の繋がり、外との繋がり、デザイン性、住みやすさ、クライアントの要望の実現度を充実させていきます。

上記の平面図だけを見て下さい。

吹き抜けが多い、フリースペースがある、などは分かりますが、どう繋がるかは全く分かりません。

窓の大きさも分からないので外との繋がりも不明です。

上記の平面図に断面図も合わせて見て下さい。

明確に家族の繋がりや、外との繋がりが見えてきます。

玄関ホールも、外と繋がるフリースペースとして利用できることが分ります。

窓の大きさと方位によって、日光がどこから何時に入るのかも分かります。

 

 

上記の平面図に断面図、パースも合わせてみて下さい。

よりリアルに家族の繋がりや、外との繋がりが見えてきます。

さらに住宅の雰囲気や質感も具体的にイメージできるようになり、実際に暮らす場面の想像ができます。

 

住宅を「平面図だけ見たとき」と、「平面図と断面図、パースも合わせて見たとき」の空間イメージはかなり違いますよね??

このくらい立体的に把握しないと分からないことが、ほとんどです。

 

あなたも住宅を建てるときは是非、断面図やパース、模型などを設計者に要求して下さい。

空間の繋がりを立体的に捉えてみることで、平面図だけでは把握できないことが浮き彫りになるはずです。

住宅は断面計画を丁寧に行うことが大切です。

平面上の部屋の並び順や動線計画だけで住宅を考えても、快適な住宅は作れません。

 

 

■まとめ

 

繰り返しになりますが、住宅で一番大切な事は「家族の繋がりとコミュニケーション」の計画です。

「自分の好きなものに囲まれた誰にも邪魔されない部屋」を平面上に並べただけでは、各自が引きこもりがちになり「家族の繋がり」が希薄な住空間になります。

そんな住宅は嫌ですよね?

個々のプライバシーの確保も大切ですが、家族の繋がりを自然と保てる空間設計をしっかり行うことの方がより大切です。

 

わざわざ家族みんなが一箇所に集まらなくても、ただ気配を感じるだけでも、おのずと繋がりは生まれるものです。

視線が合わなくても家族の気配が感じられたり、会話に参加しなくても別の場面で会話の種が生まれたり…。

 

是非あなたも「家族みんなが過ごす住宅としてどう計画するか」を様々な視点から立体的に考えて下さい。

 

あなたに合った家族間のほどよい繋がりをつくり、平面図上に要望の部屋がそれぞれただ並んでいるかよりも、「家族の繋がりとコミュニケーション」を重視した住宅にしましょう。

 

笠井啓介

 


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